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■ 保護対象としての発明
特許法では、発明について
『自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの』と定義され、
産業上利用することができる発明を保護対象としています。
ここでは、法上の発明について詳述します。
■ 発明の成立要件
発明は上記の定義に示される要件を満たしたときに成立します。
(1)自然法則を利用していること
「自然法則」とは、自然界において経験的に見出される科学的な法則をいいます。
自然法則は、自然科学上の法則に限らず、経験上一定の原因によって一定の結果が生ずる経験則も含まれます。
自然法則を利用した発明といえるためには、「発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」
(いわゆる「当業者」のこと)が、それを反復実施することにより同一結果が得られるという反復可能性が必要です。
また、課題に対する解決手段が自然法則を利用していなければなりません。
したがって、計算方法、作図方法といった人間の知能的活動、精神的活動によって発見・案出された法則や、
ゲームルールなどの遊技方法、商売方法のように自然法則とは無関係な人為的取り決め、
催眠術を利用した広告方法のような心理法則、永久機関のように自然法則に反する者、
万有引力の法則、エネルギー保存の法則のように自然法則それ自体であって自然法則を利用していないものなどは、
特許法上の発明に該当しません。
一方、発明として保護の必要性のある電子マネー、金融システムなどは発明に該当することとします。
なお、一部に自然法則を利用していない部分があっても、全体として利用していると判断されるときは、
利用したものになります。
特許法は、発明の保護と利用の調和を図ることにより、産業の発達に
寄与することを目的としています(特許法1条)。
また、新規な発明を公開することの代償として特許権を与えます。
この特許権というのは、独占排他的な権利であり(特許法68条)、
一国内においてその効力が及ぶ(対世的効力といいます)ほどの権利なのです。
したがって、真に産業の発達に寄与する発明に対してのみ特許権を与える
べきであり、そのためにある一定の条件(特許要件)を設けています。
特許要件のひとつは、『特許を受けることができる発明』であることです。
特許を受けることができる発明とは、
特許法上定義される発明であること(特許法2条1項)、
その発明が産業上利用できること(同法29条1項柱書)、
発明に新規性があること(同条1項各号)、
発明に進歩性があること(同条2項)、
最先の出願に係る(先願の地位のある)発明であること(同法39条)、
拡大された先願の地位のある発明であること(同法29条の2)、
公益的な理由からの不特許事由に該当する発明ではないこと(同法32条)、
条約により特許できないとされている発明ではないこと(同法49条3号)、
等の条件を全て満たすものです。
一つでも条件を満たさない発明について特許出願された場合は、
拒絶、無効理由となります。
特許を取る(特許を受ける)ための条件は、
法律用語で特許要件といいます。
最低限の特許要件として、『特許を受けることができる者』が
『特許を受けることができる発明』について特許出願をしたことが必要なのです。
では、この最低限の特許要件について詳述しましょう。
(1)権利能力を有すること
特許を受ける権利の主体(権利を持つ人)となるための前提であることから、
その権利の主体たり得る法的地位又は資格が必要です。
具体的には、法律により法人格がみとめられた法人は権利能力がありますが、
法人でない社団等は権利能力がありません。
自然人は、民法上出生したときから権利能力が認められています。
ただし、これは日本人について制限なく認められますが、
日本国内に住所等を有しない外国人については、一定の制限があります。
特許法第25条に規定の平等主義国、相互主義国及び条約に別段の定めがある場合に限り、
権利能力が認められています。
(2)特許を受ける権利を有すること
ここで、特許を受ける権利とは、特許権が発生するまでの利益状態を保護するために認められる、
国家に対して特許権の付与を請求できる財産権のことをいいます。
この権利の根拠は、特許法第29条1項柱書にあり、発明をした者が原始的に取得します。
特許法は発明者主義を採用しているので、発明者の保護が厚いのです。
なお、発明者は自然人に限られ、法人がなることはできません。
例えば、企業が特許出願する場合がありますが、これは職務発明といわれる場合などで、
特許を受ける権利を一旦取得した発明者から企業(法人)が承継したためです。
(3)先願の地位を有する者であること
現在では、米国を除く世界中の国(日本も含む)が先願主義(最初に特許出願した者に特許を与える考え方)
を採用しています。
同一の発明対象に、二つ以上の特許権が存在する場合(重複特許・ダブルパテント)を排除するためです。
特許権が独占排他性を備えるものであることから、最初に出願した者のみに権利を与るのです。
■ 特許は実用新案、意匠、商標と同類の産業財産権の一種
特許は、実用新案、意匠、商標と同類の、産業財産権の一種です。
産業財産権制度は、新しい技術(発明・考案)、新しいデザイン
(意匠)、ブランド・マーク・ネーミング(商標)などについて
独占権を与え、模倣防止のために保護し、研究開発へのインセンティブを
付与したり、取引上の信用を維持することによって、
産業の発展を図ることを目的にしています。
産業財産権は、特許庁が所管しています。
発明、考案、意匠および商標は、一定の要件の下に、
それぞれ特許権、実用新案権、意匠権、商標権という独占権が与えられ、
保護されます。
さらに、産業財産権は、知的財産権の一種です。
「知的財産」とは、産業財産よりも広く、発明、考案、植物の新品種、
意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいいます。
(知的財産概念図)
知的財産とは
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知的創造物 営業標識
・発 明 (特許権) ・ブランド・マーク(商標権)
・考 案(実用新案権) ・商 号
・デザイン (意匠権) ・商品表示
・著 作 物 (著作権) ・商品形態
・半導体集積回路配置の利用
(回路配置利用権)
・植物の新品種(育成者権)
・営業秘密
※特許権、実用新案権、意匠権、商標権を、特に産業財産権という
()内は、知的財産に関して法令により定められた権利等
新年あけましておめでとうございます。
本年も、特許出願ねっと!をよろしくお願い申し上げます。
このブログでは、さまざまな特許出願・申請に関する情報をお届けします。
メルマガその他のメディアで提供したものもこちらで再確認の意味で書いていきます。
さて、今回は、特許とはそもそも何なのか、についてお話しします。
■ 特許とは?
特許法第1条には、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることに
より、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」と
また、特許法第2条には、「発明」とは自然法則を利用した技術的思想の
創作のうち高度のもの、と定義されています。
発明は、法上定義されるように目に見えない技術的な思想ですので、
構造に特徴のある機械や車のような有体物のように、
目に見える形でそれを人が占有し、事実上の支配ができるものでは
ありません。
したがって、特別な制度によって適切に保護されなければ、
発明者は、自分の発明を他人に盗まれないように、秘密にしておこうと
する(発明の秘蔵化を招く)でしょう。
しかしそれでは、発明者自身もそれを有効活用できないばかりでなく、
他の人が同じものを発明しようとして無駄な(重複した)研究・投資を
することとなってしまいます。
そこで、特許制度は、こういった弊害が起こらないように、
一定の条件のもとに一定期間発明者に特許権という独占的な権利を
与えて発明の保護を図る一方、その発明を公開して利用を図ることにより
新しい技術を人類共通の財産としていくことを定めて、
これにより技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しよう
というものです。
特許制度では、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち
高度のものを保護の対象とします。
したがって、遊戯方法などの人為的な取り決めや計算方法など
自然法則でないもの、永久機関などの自然法則に反するものは
保護の対象とはなりません。
また、技術的思想の創作ですから、自然法則自体
(エネルギー保存の法則等)は保護の対象外です。
さらに、この創作は、高度のものである必要があり、
技術水準の低い創作は特許で保護されません。
(この点、同じ技術的思想の創作としての、物品の形状、構造又は
組合せに係る考案は、高度性を必要としない実用新案制度によって
保護されます。)