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●どの時点で新規性がないとされるのか〔時期的な基準〕
特許出願の時を基準として判断されます。発明の時を基準にするとその時の決定が困難で、発明を秘密化をまねくおそれがあり、公開時を基準にすると公開の立証等が必要になり不便だからです。日だけではなく、時分も問題になります。ある日の午前中に同じ発明が学会等で発表され、午後に出願しても新規性なしで拒絶されます。
●発明の新規性の喪失に例外がある
発明の新規性の要件については、発明保護の観点から、公衆に不測の不利益を与えない一定の範囲で、発明の新規性の喪失の例外が認められています(次項参照)。
特許要件のひとつ:新規性について
特許を受けることができる発明は、今までにない新しいものでなければ
なりません。すでに公開されて誰でも知っているような発明は何ら新しい
技術を提供するものではありません。
これに特許権という独占権を与えることは、社会にとって利益にならず、
新規発明公開の代償として特許権を与えることにより産業の発達に貢献する
という法目的をかえって阻害することになるからです。
前述したように、特許法では、新規性のない発明を除き特許を受けることが
できる(特許法29条1項柱書)と規定され、この新規性のない発明について
3つが列挙されています(同項1~3号)。
それは、(1)公然知らせた発明、(2)公然実施をされた発明、
(3)頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に
利用可能となった発明、の3つです。
言い換えれば、これらの発明に該当しないと認められれば、新規性がある
発明と言えるのです。
特許法では、「産業上利用することができる発明をした者は、新規性のない発明を除き、
その発明について特許を受けることができる」(特許法29条1項柱書)とあります。
このように、保護対象の発明には『産業上の利用可能性』がなければなりません。
ここでいう産業とはどういうものか、また特許を受けることができるための
「産業上の利用可能性」を備える発明に該当するもの、該当しないものとは
どういうものでしょう。
単に学術的・実験的にしか利用できない発明は産業の発達という法目的からして保護に値
しません。
このため、特許を受けることができる発明であるためには、産業として実施できることが
必要となります。
ここで、「産業」とは、製造業以外の、鉱業、農業、漁業、運輸業、通信業、サービス業など
生産業だけでなく、生産を伴わない産業も含めた広い意味での産業を意味します。
●発明の成立要件
発明は、以下の全ての要件を満たしたときに成立します。
(1)自然法則を利用していること
自然法則の利用については、前回のブログ記事を参照ください。
(2)技術的思想であること
「技術」とは、一定の目的を達成するための具体的手段であって、実際に利用でき、知識として客観的に伝達できるものをいいます。個人の熟練により得られる技能とは異なります。技術内容は、当業者であればこれを反復実施して目的とする技術効果を上げる程度にまで具体化され、客観化されたものでなければならないとされています。したがって、フォークボールの投球方法等の個人の技能によるものや、絵画や彫刻などの単なる美的創作物、機械の操作方法についてのマニュアル等の単なる情報の提示は技術的思想に該当しません。また、ソフトウエア関連発明も一般には技術的思想でないものとされますが、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている場合、当該ソフトウエアは、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当することになります。電子マネー等が例示されます。
(3)創作であること
創作とは、新しいことを創り出すこと、自明でないことをいます。何も作り出さない発見とは区別されます。したがって、天然物の単なる発見などは、発明に該当しませんが、天然物から人為的に単離精製した化学物質は発明に該当します。
(4)高度なものであること
「高度なもの」は、主として実用新案法の考案と区別するためのものであるため、発明に該当するかどうかの判断に当たっては考慮する必要はありません。従来にない新しい機能を発揮するもので産業上の利用価値があれば、既存技術の改良であっても発明に該当します。